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糖尿病と運動療法

なぜ、痩せないの?

糖尿病の人や肥満の人は、ほとんどの人が食事制限を心がけているでしょう。でも痩せない、血糖が下がらない・・・なぜ?

2019年「国民健康・栄養調査」によると、食事で摂取する1日当たりのエネルギー量は20歳以上で男性2,141kcal 女性1,717kcalとなっています。20~40歳代のカロリー摂取量は20年間で1割前後減少しています。炭水化物の摂取量は減少し、脂質の摂取量が増加しています。つまり日本人はある意味、低炭水化物ダイエットをしてきているのです。しかし糖尿病は増加し、特に男性の肥満度が上昇しているのです。食事療法のみでは糖尿病発症を抑制できないということです。

食事制限

また、田舎の方の糖尿病の増加率が目立っています。なぜでしょう? 田舎では車社会で、少しの距離でも車で移動し、その他の身体活動(掃除・洗濯など)も低下しているためと考えられます。昔の日本人は現代人より小さい体格でも甲冑(かっちゅう)を付け、槍や刀を振り回し、鍬などで畑を耕していました。昭和の時代でも行商のおばあさんがびっくりするような大きな荷物を背負って行商に出かけていました。昔の人の方が筋力はあったのでしょう。筋肉量と身体活動が糖尿病増加と大きくかかわっていると考えられます。
筋肉量が多いと消費エネルギーが増え、また筋肉内へエネルギーの貯蔵量が増えます。血糖の上昇を抑えてくれるわけです。糖尿病を予防・治療をするには、食事療法と同時に筋肉量を増やし、それを使うことが必要なのです。食事療法のみでは無理なのです。体重を減らすことだけでは筋肉も落ちてしまい、長い目で見ると糖尿病は良くなりません。

有酸素運動

運動療法には、有酸素運動とレジスタンス運動があります。有酸素運動はインスリン感受性の増大が主な目的です。エネルギー消費は多くありません。

有酸素運動は、いつでも、どこでも、できれば毎日できるものがベストです(歩行が最適です)。運動の強さは「楽である」「ややきつい」といった体感を目安にして、運動時の脈拍数を50歳未満では100から120拍/分、50歳以上では100拍/分未満とどめます。歩行運動では1回15~30分以上で、1日2回できるだけ毎日行います。

しかし、運動で消費するエネルギーは多くありません。たとえば、アイスクリーム120g(240kcal)を食べると、それを消費するためには60分以上のウォーキングをしなければなりません(糖尿病のコントロールが極端に悪い場合、眼底出血がある場合、心臓病や腰痛症がある場合は、運動を始める前に主治医に相談しましょう)。

体脂肪を1kg減らすには、7,000kcal消費しなければなりません。ジョギングでも100kcal消費するには約10分かかります。よって、脂肪1kgを落とすには、700分ものジョギングしなければなりません。
短期間の運動だけでエネルギーを消費するのは困難です。有酸素運動はインスリンの感受性の改善が主な目的で、エネルギーの消費は多くありません。大量の消費は不可能と考えてください。

レジスタンス運動

レジスタンス運動は筋肉量の増加と筋力の増強が主な目的です。おもりや抵抗負荷に対して動作を行う運動です。糖の70%は筋肉へ移動します。筋肉量が多いほど糖を貯蔵でき、また運動により多くの糖を消費することができ血糖を下げやすくします。糖尿病の予防や治療には、筋肉量を増やし、筋肉を動かすことが必要です。

さまざまなレジスタンス運動

注意:運動で膝や腰を痛めては、元も子もありません。自分に合った運動を探しましょう。水中ウォーキング、スクワット、椅子に座った運動、上半身だけの運動など、呼吸を止めずに自分のペースで鍛えましょう。筋肉が付くと転倒防止、腰痛改善、代謝改善、血圧低下などのメリットが多いのです。運動前のストレッチは忘れずに。

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